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提言

コロナ禍で思う大切なこと

理工学ITC所長:松尾 亜紀子


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2019年12月初旬に中国の武漢市で最初の感染者報告があり、わずか数ヶ月で世界中に感染者が広がり、パンデミックというものを私達は経験することとなった。日本では2022年4月の年度の切り換えに時期を合わせて、様々な状況でコロナウイルス対策が始まり生活は一変した。そこから2年。日本は何度もの波を乗り越えながらも、遂に第7波で世界最大の感染者を出すこととなった。しかし、私達はこの二年間にコロナとの付き合い方を徐々に学び、そして慣れてきたように思う。現在、第7波の真最中であり、連日20万人の新規感染者が報告されている。
だが、私達は冷静を装い、日々電車に乗り会社に出勤しているのである。また、ここ慶應義塾大学では授業は対面へ戻り、学生はキャンパスへ戻ってきた。2022年4月、数多くの学生達がキャンパスに集っている姿を見たとき、本当に懐かしく、心から嬉しかった。この光景が途切れること無く続くことを心から望んでいる。

さて、このコロナ禍において生活が一変したことは多数あると思うが、ここではITCの活動に関係することについて挙げてみたい。第一に挙げられるのはオンライン会議あるいは授業ではないかと思う。
オンラインにより様々な活動は一般社会においても広く使われるようになり、コロナ禍が終わったとしても、オンラインでの勤務形態は一定程度続くのでは無いかと思われる。これこそ、「大惨事の後に社会変革が起きた」と言えるものと考えている。2020年以前においても、私は外部の共同研究者との打合せのために、隔週程度でオンラインミーティングをWebexにて開催していたことから、ある程度慣れていたシステムではあった。しかしながら、慶應義塾大学側は大学の研究室でまとまり、先方も参加者は先方の会議室に集まり、2拠点でのミーティングであったことを思うと、現状の使い方とは異なるものであったと認識している。
「働き方改革」の法律が2019年4月に施行され我々の意識も変わってきたとは思うが、このコロナ禍における有無を言わせない働き方の変化は、社会が変わるきっかけとなったと思う。
オンラインでの様々な取り組みが進んで行く中、対面でなければならないものについても明らかになってきた。私が思う最大のものは、人との出会いや語らいなど、人と人がリラックスして過ごす時間ではないかと考えている。現状のオンライン技術では、2次元画面の中で対面する人、それが一対一であったとしても、相手の本心や微妙な感情の起伏を掴むのは難しいと感じている。では、オンラインミーティングの技術が上がれば良いのか。今後、オンラインミーティング技術の向上があったとしても、それは会議の効率化や精度向上であって、微妙な感情の起伏を映し出すのはオンライン向きでは無いと考えている。つまり、わざわざオンラインを使うことは無く、本来の形である対面で会えば良いのである。自分が大学生の時の生活を思い出しても、オンラインとは電話での会話であり、人と会うこと自体がオンラインであることは無い。また、講義も出席していたかどうかは別の話として、講義は対面のみである。どんなときになっても、大学生の若者からノーマルな学生生活を奪うことはできないと思うと共に、大学が提供する学生生活の大切さを思い知ったコロナ禍であった。

最終更新日: 2022年9月22日

内容はここまでです。