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提言

知ってほしいITC、知るべきITC

日吉ITC所長:安田 淳


私は2021年秋に、小林宏充前所長の後任として日吉ITC所長をお引き受けしましたが、日吉ITCが日々果たしている役割を改めて認識しつつあります。大学の教育研究を情報・通信という領域で支えるITCの意義は今さら申し上げるまでもないでしょう。しかし私だけのことかもしれませんが、あまりそうしたことを意識しない向きもあるのではないでしょうか。慶應義塾の中でもとりわけ多くの学部、研究科、そして一貫校が所在する日吉地区で、日吉ITCがこれほど広範にさまざまな活動や業務を推進していることを、どれだけの方々がご存知だろうかと思います。教員にとっても職員にとっても、もちろん学生・生徒にとっても、日吉キャンパスで送る当たり前の毎日の一端を日吉ITCが支えていることは、もう少し認識されてもいいように感じます。

情報・通信という分野はそもそも「縁の下の力持ち」といったような特性を持っているからこそ、それの使い手はやはりそのことに意識をはたらかせるべきかもしれません。それは、知らない世界で何かを支えてくれる組織や人がいることに想いを寄せましょうというような単なる心構え程度にとどまりません。それを知ることで、私たちの活動や仕事をさらに推し進め発展させることができると思われるのです。

安全保障という私の研究領域では、サイバー戦とか知能化戦争といったことがかなり明確に認知され、問題化し、議論されるようになってきました。サイバー戦や知能化戦争は、軍事とか戦争といった人間社会の究極的かつ最悪の場面において用いられます。いうまでもなくこれらは情報・通信と直結しており、そもそも情報・通信の発達があってこそ生まれてきたものです。それらが、まさに人間の生死や国家の存亡に関わる究極の局面で用いられるからこそ、それらをよく知り議論することで、より効率的、効果的に目的を達成したり対処したりしなければなりません。

いささか論理に飛躍があるかもしれませんが、そのような意味では、教育研究という目的を追求する私たちの活動が、ITCの担う情報・通信分野に支えられていることを認識し理解することは、私たちの目的をより効率的、効果的に達成することにつながるように思います。情報・通信分野には重要であるけれども見えにくいという特性があるからこそ、私たちは意識的にそれを知ることで、私たちの目的をよりよく、より適切に達成できるように思うのです。

回りくどいことを申し上げましたが、要するに多くの教員、職員、学生にITCのはたらきを知ってもらい、意識してもらいたいということです。そしてそのことが翻って教員、職員、学生それぞれの目的に必ずいい作用をもたらすということです。ITCの職員は、地下の事務室で静かにモニター画面を見つめキーボードをたたいていることもあれば、日吉キャンパス内の情報通信関係施設を校舎や教室で点検確認することもあります。あるいは塾内のそれぞれの機関や組織のニーズに相応しいIT環境を企画検討し、必要な設備備品を選定・発注して設置・導入し、それらの正常な作動を確認して維持保守するといった実に多彩な業務を、限られた人員でこなしています。私はこのような慶應義塾になくてはならない組織としてのITCに参与できていることを、大変誇りに思っています。

最終更新日: 2022年9月22日

内容はここまでです。