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提言

ストレージの未来

ITC副所長:小林 宏充


PCで作成したデータは、高速回転するディスクに書き込みをするハードディスク(HDD)や回転部分のないフラッシュメモリであるSSDに保存(ストレージ)することが多いと思います。スマートフォンやタブレットなど使用するデバイスも増えてきました。それらのデータを共有するには、インターネットでデータを共有できるクラウドシステムを利用するのが便利です。

以前はセキュリティが心配なので、ハードディスクのデータをUSBメモリなどに保存して、それを別のPCやデバイスに移すなど行っていましたが、クラウドの便利さ、さらにはセキュリティの向上から、クラウドシステムは、なくてはならないシステムになっていると思います。

クラウド上のデータは暗号化されており、外からは見えないですし、通信も暗号化されているシステムもあります。豊富なプレビュー機能があるシステムもあり、ダウンロードすることなくパワーポイントのスライドやmp4の動画を閲覧できます。低頻度の個人のバックアップと異なり、プロ(システム)が随時バックアップを行ってくれていますので、特定の期間内なら過去のデータの復旧までできるものもあります。クラウドシステムは、様々な会社から出ており、甲乙つけがたいところもあります。時代とともに淘汰されるかもしれません。

これまで無料で無制限にストレージ可能としていた会社も、有料化を考えてきているようです。いろいろな背景があるのでしょうが、ストレージサービスではどういったことをしているのでしょうか。

各社、データセンターという大量のHDDが稼働する場所を用いて、データのバックアップを行っています。話を単純化しますが、10年に1回壊れるHDDだとして、壊れる頻度がランダムだとすると、3650台あれば、毎日どこかのHDDが壊れることになります。個人のシステムであれば、HDDの数が少ないので、せいぜい数年に1回取り換える程度の作業ですが、前者では毎日なので、プロのストレージ管理者が必要になります。つまり、大量のHDDを管理するには、個人や組織の誰かの片手間でできることではないということです。そのような観点からも、クラウドシステムの利用が促進したと思います。

IBMはインテルのCPUを搭載したワークステーションを大量に繋いで並列化を行うことによって、高速演算できるクラスター型のスーパーコンピュータを作成しました。専用のCPU開発には多額の資金が必要でしたが、よく使われているCPUを大量に繋ぐことで、安価に高速演算ができるシステムを作りました。その際、HDDも大量に繋ぎました。そこで、上記のことに気が付きました。すでに普及したPCを販売するよりも、大量のCPUやHDDが繋がったグリッドシステムの研究開発に注力したほうがよいと考えたそうです。今後、専門のスーパーコンピュータではなく、各家庭の電力計や再生可能エネルギーの出力データが繋がり、それらの管理が必要になります。

たかがデータ保存、されどデータ保存。基本的なものだけに、今後どのようなクラウドシステムが生き残るのか、我々はどのような使用方法がよいのか、今しばらく悩ましい時代が続くのかもしれません。

最終更新日: 2022年9月22日

内容はここまでです。