• Japanese

提言

遠隔活動に対する雑感

ITC副所長:楠本 博之


近年、いろいろな業種での業務のデジタル化の必要性が認識され、移行が進んできましたが、コロナ禍をきっかけの一つとして、より強く意識されるようになったかと思います。
ITCが直接的に、あるいは間接的に大きくかかわっているデジタル化と遠隔での活動について、今まで以上によい環境を構築、運用していくとともに、新たな使い方など、いろいろな可能性を示し、利用者の選択肢を増やしていくことも重要だと考えます。
本稿では、このような活動に関する雑感を述べますが、これからのITCについて考える一助となれば幸いです。

慶應義塾でも、ネットワークを介しての遠隔授業や遠隔会議が必要にせまられ、より一層活用されるようになりました。
キャンパスが分散している中での全塾での会議は、従来から遠隔会議が一部で活用されてきましたが、原則が遠隔会議となり、ある程度まで遠隔会議ですむんだと感じておられる方も多いかと思います。
もちろん、対面で一同が介する必要性がある場合もあると思いますが、移動負荷の軽減、できるかぎりの資料の事前準備とデジタル化による会議の効率化などをはじめとする大きな利点があり、今後も継続されることを願っています。
従来は、対面での会議に一部の人が遠隔で参加するという形式での実施がありましたが、対面で参加している人と遠隔で参加している人の間の隔絶感といったものが、指摘されることがありました。
昨今、すべての参加者が遠隔で参加することで、このような隔絶感が取り払われて、一部の参加者の疎外感といったものが薄れたと感じられている方も多いのではないでしょうか。
今後も、このような遠隔での活動を継続していく上での重要な視点になるかと思います。

教育面では、現在の大学1、2年生は、学部によって差はありますが、対面での経験が限られており、今後の影響を注視しなければならない状況にあると思います。
そして、小中高、そして大学での、情報教育環境の学校間における整備の差やそれに伴う経験の差が少なからず影響を与えていると思われ、多様な支援を、ITCなどいろいろな組織が提供する必要があると感じています。
単なるオンライン授業のための仕組みだけでなく、今までキャンパスやキャンパス外で行われていた学生間の公的私的な交流の助けられるような道具立ても考えにいれるべきでしょう。
わざわざ、「私的」と示したのは、学生同士の交流は多様で、キャンパスでの学術的な活動だけが大学生として成長を担うものではないからです。いろいろな制約はあるとは思いますが、学生の成長を応援するという意味で、授業に直接関係するようなもの以外の活動に対しても、広く使えるような情報教育環境の提供に努めてほしいという思いがあります。

また、以前にもこの年報で述べさせていただきましたが、サービスをどのように提供するかについて、長期的な戦略的視点にたった計画がますます求められるように感じます。
単純なアウトソーシングから、今や、Xaas(X as a Service)と呼ばれるような、さまざまなサービス利用に基づく外部サービスの利用が可能になってきています。
外部サービスの極端な利用による内部の技術力不足、対応力不足などは避けなければなりません。
一方で、費用対効果に優れる外部サービスを利用しないことは、相対的にサービス品質の低下を招きます。説明責任を果たしつつ、適切なサービス形態のありかたを選んでいかなければならないと考えています。

以上、まさに、雑感になりましたが、ITCの活動を理解し、いろいろな要望をぶつけていただければと思います。

最終更新日: 2021年10月5日

内容はここまでです。