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提言

コロナ禍にあってネットワークの重要性とニューノーマルへの期待

理工学ITC所長:松尾 亜紀子


2020年4月以降、突然のコロナ禍の襲来によって勤務先を追われ、在宅勤務となり面食らっている方は多いのではないかと思います。私自身、2020年8月末の今日まで、基本的に自宅にて勤務しています。もちろん、教職員はキャンパスに自由に入ることはできるようになりましたが、講義の準備、研究指導など、やるべきことの殆どはインターネットを介してなんとかできており、在宅(ステイホーム)に慣れると通勤の無い日々も悪くないと思っております。これまでも一般企業において在宅勤務の推奨は行われていたように思いますが、それはあくまでも非常手段であったように思います。つまり今回のコロナ禍における企業の対応は、今日までの働き方を改革する大きな転機となり、生活様式のパラダイムシフトへと繋がるのではないかと期待しています。

これまで東京あるいは東京を中心とする首都圏に様々なモノ・ヒトが集中していることから、首都圏に住まい、学び、仕事をすることが一つのステレオタイプでした。今回のコロナ禍を過ごし、場所(ロケーション)への概念についてもっと柔軟な発想が許される可能性があるように感じます。巷では、「ワーケーション」という造語も浸透してきたようで、働くこと自体は変わりなくとも場所については問われない可能性がでてきました。これまで自宅とは寝るところであり、働くところではありませんでした。一人暮らしであれば机と椅子を確保することでスムーズに在宅勤務に移れるかもしれません。しかし、家族がいる場合には話しはそう簡単にはいかないのです。本来、「仕事をする・学ぶ」ということは「職場へ行く・学校へ行く」を意味しており、自宅には不在となる行為です。つまり、自宅にいない人がいるものとして計画されていた自宅の使い方が変わることになります。なお、ここで述べたことは、全てインターネットがあることを前提としていることを忘れてはいけません。総務省発表の令和元年のインターネット普及率は個人で89.8%、企業(従業員100人以上)99.8%であり、この高い数値が私達を職「場」から解放する可能性を示しているのです。しかしながら、本来、仕事や学びは自宅外で行うものであったものが自宅において行うことになった場合、多くの不都合が生じます。自宅にはシャワーと寝室以外は必要無いと思っていた人にとっては、一日中過ごす場所としては適さないことは容易にわかります。また、家族住まい、夫婦共働きで学校に通うお子さんがいた場合にはどうなるのでしょうか。インターネット回線が貧弱な場合には、ネットワークの取り合いとなり、仕事をする場所を巡って家族闘争が起きるかもしれません。本来、日中は空室であるはずだった自宅の人口密度が上がり、自宅としての役割も大きく変わります。会社と自宅という2つの職場のあり方は、インターネットが普及してきた今日、コロナ禍を通して新しく考えなければならない課題となりそうです。

Withコロナ、afterコロナの世界へと移ったとき、今回学んだ新しい生活様式(ニューノーマル)がどのような形で浸透していくのか興味深く観察したいと思います。在宅勤務が本当に浸透するのか。浸透するのであれば、自宅に必要とされる役割が変わるはずです。つまり、自宅にも大容量のインターネット回線と共に職場(書斎)が必要となります。そうすると賃貸の場合には家賃が上昇することになりますが、本当に出社する頻度が低いのであれば、地方への移住も可能となります。会社においては社内に全従業員を収容する必要も無くなり、賃料や光熱費が軽減することが期待できます。ざっと予測しただけでもジワジワと多くのことが変わりそうです。COVID-19は世界を混乱へと導いた厄介なものではありますが社会を変える起爆剤の一面もあり、私達の適応が必要とされることとなりそうです。

最終更新日: 2020年10月6日

内容はここまでです。