• Japanese

提言

「今こそITリテラシ教育を!」

ITC副所長 萩野 達也


 先日、隣の部屋で事務処理をやっているMさんが家で使っているパソコンに、変なメッセージがでるようになったと相談を受けた。Webページを見ていたりするときに、突然大きなメッセージが出てくるらしい。良く分からないので、パソコンを再起動するとメッセージはなくなるので、また利用しているとのことだった。時々しか出ないし、古いパソコンなので故障しかけているか、あるいは押し売りのようなメッセージで、出ない限り大丈夫だと思ったようだ。パソコン上にいろいろなメッセージが出てくることがあるが、かならずしも、一般の利用者に分かりやすいものではない。しかも英語で書かれていたりすると、見なかったことにする利用者も多いのではないだろうか。気になったので、次に出た時に画面を携帯で写真を取って、送ってもらうことにした。

 Mさんから送られてきた写真を見ると、「システム内でスパイウェアが検出されました。マルウェアの影響でコンピュータが通常より遅くなっています。」というものだった。知っている人が見ればあきらかなことだが、「スパイウェア」や「マルウェア」は一般の人はすぐわかる言葉ではない。「ウイルス」は一般にも驚異のあるものなので分かりやすいが、「スパイウェア」や「マルウェア」はコンピュータ関係が作った造語であるため、一般の利用者には分からないこともある。このメッセージでは、影響として「コンピュータが通常より遅くなっています」なので、遅くなるくらいは我慢すれば良いと考え、危険なものが入っているとは思わないかも知れない。

 Mさんには「スパイウェア」が何かを説明し、次にメッセージが出た時に指示にしたがって対処してもらうことにした。その結果、Mさんはうまく対処することができたが、スパイウェアに関するメッセージを出していたのは、Mさんがインストールしていたウイルス対策ソフトとは別のものだった。

 フリーソフトウェアのアップデートを行なう時、気をつけないと、一緒に別のソフトがインストールされたり、勝手にパソコンの設定が変更されてしまったりすることがある。Mさんはあるソフトの自動アップデートの際に表示されるメッセージを良く読まずに「次へ」ボタンを押したために、2重にウイルス対策ソフトが入れられてしまったようだ。今回の場合、2重になっていても正しく機能していたと思われるが、場合によるとすでにはいっていたソフトとバッティングすることや不具合を起こしたりするかもしれない。今回の場合も少なくともパソコンの処理速度は落ちていたはずである。

 パソコンに入っているOSやソフトウェアのアップデートは重要である。インターネットにつながっていない昔なら、アップデートしないとしても、ソフトのバグで自分が困ったりするだけだったが、インターネットにつながるようになり、アップデートしないことで、情報漏洩につながったり、他のパソコンを攻撃する踏台として利用されたりする可能性があるので、常に最新のものにアップデートしておく必要がある。しかし、上記に書いたようにアップデートの時に、きちんとメッセージを読まないと、希望しない別のソフトを入れたり、意図せぬパソコンの設定変更を許可してしまうことになる。これらのソフトも利用者にインストールするか求めるチェックボックスがあるのだが、「Aをホームページに設定する」や「Bを検索エンジンとして利用する」や「高速なCをインストールする」や「パソコンを守るDをインストールする」などを書かれると、良いことのように思って、そのまま「次へ」ボタンを押してしまう利用者も多い。

 私自身はなるべく不必要なソフトは入れないようにしている。OSによっては時間とともに朽ちてくるというものもあるが、あれは不必要なソフトや機能を次々と入れるから起こるものだと思う。私の場合、パソコンを新しく買ったとき、まずやることは、不必要なソフトや機能をアンインストールするところからである。パソコンはなるべく軽い形で使い続けたい。

 最近の大学生は入学以前からスマートフォンでメールやWebを使ったりしているので、インターネットやパソコンの利用にはなれているのは事実だが、あくまでも利用者としてであって、仕組みについてはそれほど興味がなく、動けば良いという考えで使っていることが多い。リテラシ教育でウイルスの恐さなどを説明しても、実際に自分が困らないことには、あまり気にかけてくれない。しかし、実際にウイルスにかかったパソコンになってからでは対処が大変である。

 ITCの窓口には困った時にしか来ない。ウイルスへの対処は、常に自分のパソコンをメンテナンスしていくことが重要である。ITCも相談に来るまで待っているのではなく、もっと積極的に正しい利用の仕方や、パソコンのメンテナンスの仕方を学生に教えに出てはどうだろうか。ITCが管理しているネットワークや機器である。間違った使い方をして欲しくない。インターネットが普及してその利用があたりまえになってしまった今だからこそ、もう一度いろはからきちんと理解させる必要があるのではないかと最近思いつつある。

最終更新日: 2013年11月12日

内容はここまでです。