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巻頭言

デジタル社会のネットワークとセキュリティ

ITC 所長:野寺 隆


21世紀を生きる我々は、スマートフォンやタブレットに代表されるモバイル情報機器や情報通信環境に深く依存したデジタル社会の真只中で生活しています。デジタル社会の変化のスピードはきわめて早く、昨日まで安全だと考えられたセキュリティシステムも気がつくと情報機器の劣化やソフトウェアの更新遅れにより、認証基盤としてのセキュリティが滞った万全でないシステムとなっている可能性があります。

近年、我々が直面しているデジタル情報の特徴は、まず、なんと言ってもビッグデータ(Big Data)、すなわち情報量の巨大化です。このような情報量の巨大化に備えて、2015年8月に、慶應義塾ITCは次世代大容量高速化ネットワークの実現に向け、情報基盤関連の作業として第6期の慶應インフォメーションスーパーハイウェイ(KISH: Keio Information Super Highway)のバックボーンの置き換えを行いました。2016年4月にはSINET5と100Gbps接続を開通させています。従来、SINET5の接続ポイントは日吉だけでしたが、信濃町にも接続ポイントを設け、ネットワークの安全性と利便性を向上させました。

現在、ネット社会の情報技術は、グローバルに変化しており、アカデミックな分野においても利用価値の高いものになっています。従来、学生や教職員がモバイル端末を使って国内外の異なる大学や研究機関のネットワークを利用するには、新たなネットワーク利用申請が必要でした。そこで、ネットワークへの接続の利便性をはかるために、慶應義塾においても2015年12月より高等教育機関のネットワークローミングであるeduroamが学生・教職員の間で利用可能となりました。国内だけでなく世界各国の教育機関で開催される学会や国際会議に出席したときなど、モバイル情報機器(PC、タブレット、スマートフォンなど)にあらかじめeduroam利用の設定を行っておけば、eduroamに参加している全世界の高等機関で新たに利用申請することなくネットワークが利用できるようになりました。

さらに、一貫教育校に関しては、本年度、情報検索の利便性の向上を図るために図書システムのサーバのリプレースを行い、学外からの高速なネットアクセスが円滑に行えるようになりました。

現在、慶應義塾ITCは情報セキュリティに関して、DNSやログの管理システムのクラウド化を行い、可用性の向上とコンプライアンス向上をはかっています。もちろん、高速なネットワークやそれに付随するソフトウェアだけを最新の機器に置き換えて使用するだけでは、創造性豊かな社会を生み出すことにはなりません。それらのツールをうまく利用して学生や教職員のさまざまなコミュニケーションを活性化させてゆくことが、大学にとどまることのない社会貢献を生み出す原動力になると考えています。また、慶應義塾ITCは、情報漏えいのリスクを減らす高度なセキュリティ対策と個人のプライバシー保護の強化に努めています。しかし、外部からのアタックに対して、ITCだけに依存するのではなく、各ユーザ自らが自分の身を守る対策を常に心がけることも重要ではないでしょうか。

慶應義塾ITCは、皆さんのITCとして、これからも情報基盤を構成する高度なテクノロジーだけに限定することなく、ネットワークの制度やものの考え方という文理両面を併せ持つ組織として、学生や教職員の情報セキュリティの保全だけでなく、利便性の向上に努めてゆきます。

最終更新日: 2016年7月19日

内容はここまでです。