• Japanese

巻頭言

「大学ICT推進協議会」と「大学情報サミット」

インフォメーションテクノロジーセンター所長 赤木 完爾


慶應義塾が2011年2月の設立登記時から会員である「一般社団法人大学ICT推進協議会」という組織がある。ITC所長に就任した2011年10月から、理事として加わっている。この協議会は、米国において2,200を越える大学・教育関係組織が加入するNPOであるEDUCAUSEを範とする組織であり、協議会の目的は「インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー(ICT)を利用した高等教育・学術研究機関の教育・研究・経営の飛躍的強化」をめざすことが謳われている。

この協議会の発足の背景には、国立大学情報教育センター協議会と全国共同利用情報基盤センター長会議の協議内容の重複解消という国立大学が組織する機関間の問題があったが(前者は2011年3月に解散)、他方で米国EDUCAUSEにかかわっている有志の間で、教育・研究・マネジメントのための総合的な大学ICTの協議の場が必要であるとの認識の高まりがあった。こうした事情から新たに私立大学も加わってこの協議会が設立された。現在会員高等教育機関は72である。所長として各機関の代表者で構成されるCIO部会に参画しているが、各校CIOはほぼ例外なく情報系ないし理工系の先生方で、人文・社会系の教員で果たして務まるものかと危惧した。しかしこの頃から、大学の情報基盤センター等が直面する問題が、必ずしも情報部門の取り組みだけでは対処できなくなるような趨勢が顕著となったため、何とか務まっている廻り合わせである。むしろCIO部会で得られた知見が所長の業務に役立つことがしばしばあったことを強調したい。

ことに現在も取り組みが継続している情報セキュリティ対策の制度化においては、推進協議会を通じて知遇を得た内外の大学CIOの方々に多くを負っている。情報セキュリティはわが国の法制度の中ではきわめて未整備の領域だが、それでも国立大学法人の諸規定が内閣官房で策定される規則をある種の上位法令として捉え、体系性をもって整備されている実態に気づいたのも、この協議会へ出かけたことの効用であった。さらに国際標準化機構 (ISO) が規定する情報セキュリティに関する国際規格との整合性について、推進協議会のCIOセミナーで学べたことも大きな意味があったと感じている。

さて、今ひとつ所長としてかかわっている学外の組織に「大学情報サミット」がある。「大学情報サミット」は、いわゆる東京六大学から東京大学を除いた五大学で構成される大学間交流の一つで、各大学のIT管理部門の職員が中心の組織である。〔サミットの来歴と現状の紹介は、田山善裕「大学間の交流―大学情報サミット」(『大学時報』第356号2014年5月)を参照〕。

五大学のIT部門の所長など管理職に相当する役職教員が年2回集まるのが所長懇談会であるが、そこでは、ともすれば自己完結しがちなIT部門の取り組みに対して、そうした業務とは異なる視点からの分析や意見が遠慮なく披露される場である。啓発されること限りないが、各校の所長は、ITに専ら集中している諸活動の上空で、福澤先生の言を以てすれば「不意の難に番をする者」すなわち「奴雁」であることを要請されているのかも知れない。

最終更新日: 2014年10月17日

内容はここまでです。