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特集

Zoomの導入について

ITC本部:金森 勇壮

2020年春より大学における教育の方法が大きく変わった。望もうが望むまいが、多くの授業でオンライン化を採り入れなくてはならない状況となった。コロナ禍における緊急事態宣言によるものだ。
学生にとってキャンパスでの大学生活は、社会に溶け込み、仲間との交友を深め、学業や興味のあるものに邁進する、人生でも一番大切な場所と時間だ。それが、このコロナ禍によって、通常はできたはずのことができない状態となっている。授業においても、直接のコミュニケーションを持った方が深く指導できる科目もたくさんあるにもかかわらず、一番良い形態の授業を受けてもらうことができなくなっている。
可能な限り良い授業環境を学生に提供し、また、関係する教職員に余計な労力をかけないために、IT側から支援する取り組みが必要となった。ITCでは授業の補助ツールとして、授業支援システムを提供していたが、これをほぼすべての教員が最大限に活用するようになり、そのための規模拡張などを行った。さらに必要となったのが、オンライン授業を実施するための基盤である。これにZoomが採用された。

導入に向けた検討は2020年4月から始まり、5月前半には導入が完了した。学内の認証基盤keio.jpはSSOとして標準的なShibbolethを使って実装されている。そして、Zoomもすでに世界各国で活用されているSaaSであり、わかりやすい認証連携のインタフェースとマニュアルが用意されている。義塾への導入に際しては、IT管理者として大変だと思った作業も苦労した点も少なかった。
何よりも大変であったことは、時間的に猶予のない中でZoomを多くの教員に使っていただくため、広く案内や説明をする必要があったことではないだろうか。スムーズな授業形態や既存システムの活用方法の検討、そこから毎日のマニュアルの作成や改善、利用者へのヘルプ対応など、義塾全体やITC全体で一丸となって取り組んだ全体の努力の成果であると思う。そして、教員、学生、個人個人の積極的な取り組みにより実現したのだと思う。
さまざまな人や組織が協力して大きな問題を乗り越えた。これは義塾の団結力を感じさせる出来事であり、とても誇らしく感じた。関係された皆さまにこの場を借りて感謝したい。また、長年の運用により義塾の教職員、学生に広くkeio.jp認証が浸透していることも感じさせた。これは就職以来ITCに所属している自身にとって、心温まる思いがした。

春の授業を乗り越え、教職員とも研究や職務などに積極的にZoomを活用するようになった。自身についても、対面のミーティングの機会が非常に少なくなった。
Zoomでは利用者からの音質・画質についてのトラブルの問い合わせがなく、また、使用していて常にクリアであることを感じ取れる。品質面において、授業のメインツールに選択して正解であったと感じられる。また、管理者の機能としては、個別のミーティングなどに関する状況が、詳細に分かりやすく記録されており、利用者からの問い合わせに対するエビデンスとして大変有効に活用できた。Zoom社の慶應専属の担当の方からもとても親身に対応いただいており、いくつか発生した案件もスムーズに解決している。
さらに、オンラインセミナー機能であるウェビナーについても多くの利用依頼をいただいている。ウェビナーオプションには追加の費用がかかるため、義塾でも少数の用意しかない。そのため、その限りある資源を日程と調整して割り振る作業が必要となり、これも日常業務として追加となった。これに係る作業をしていると、自分が会議室予約の仕事をしているようである。これもリアルとバーチャルが溶け合ってきている傾向なのかもしれない。単純にデジタル、非デジタルという分類ではなく、広い視野で業務を再構成する力などが組織には必要なのではないかと感じられる。
このように、Zoomは完全に教育・研究のインフラ化してしまい、義塾の運用と切り離せないものとなりつつある。しかしながら、現状に流されるだけではなく、他の製品と比較しながら次年度以降も適切な導入を試みたい。

最後に一つ、Zoomを利用されている方がこの文書を読んでいるのであれば、気に留めていただきたい点がある。
クラウドサービス全般に言えることであるが、Zoomは複数組織の環境が複雑に絡み合って成立しているシステムである。
Zoom社のシステム、義塾の運営しているkeio.jp認証システム、開催者を含めた参加者各個人の端末環境とその場のネットワーク、そして、その間をつなぐインターネットなど、すべてが無事に動いていることで意図したとおりに実行される。しかしながら、これらすべてが無事に動いているということを誰も保証することができない。Zoom社と義塾がシステムの安定運用のための努力をし、個人個人がその場で万全を期していても、確実とは言い切れない運用形態である。
Zoomを使う際には、まず、関係する各個人が事前に準備万端とする必要がある。特に開催者や講演者など会合の中心となる人は、接続する端末・ネットワークの安定性をできるかぎり確保しておかなくてはならない。その個人の環境の不具合が、会合全体の運営を妨げる可能性があるためである。また、開催者はイレギュラーが発生した場合にも適切な判断、案内、代替策をとれるようなプランをあらかじめ用意しておくことが重要である。これらの備えで、より安心して活用いただけるはずである。ITに限らずどのような道具でも、仕組みを理解した上で活用することが大切であると思う。

ここ数年の間に、Zoomに限らず学内の多くのことがオンライン化に押し進められたように感じる。だが、まだまだ最適化には程遠い。これをプラスのきっかけとし、大学の新しい運用形態へとつなげていきたい。新型コロナへの対応や今後の世界に、人類の一員として協力をしていきながら、教育機関のITの面からも義塾を通した社会へのへのサポートに全力を尽くしていきたい。

最終更新日: 2021年10月4日

内容はここまでです。