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特集

インターネットサービスの利用と情報倫理教育

ITC本部 助教:塚原 康仁


スマートフォンや、タブレットといったモバイル端末の普及と、モバイルネットワークの急激な発展により、インターネットサービスを誰もが、いつでも、どこでも利用する時代が到来している。インターネットサービスでは、従来のとおり、ニュースといった記事を閲覧することから、音楽や動画といったデジタルコンテンツの共有サービス、位置情報を活用したナビゲーション、ショッピングサイトのようなe-コマースなど多様なサービスの形態を利活用することができる。インターネットサービスの中でも、SNS(Social Networking Service)というユーザ間の結び付きにより情報共有をすることが可能となるサービスはとりわけ活発に利用されており、写真や動画といったデジタルコンテンツの共有から、移動履歴のような日々の活動を共有するサービスなど、多様な分野でサービスがそれぞれ提供されている。こうしたサービスは、個人の端末を介して活発に利用されるようになっている。

しかしながら、SNSのようなインターネットサービスの利用が活発になると、著作権や、個人情報、プライバシーなどが意図的にあるいは意図しないで侵害されるなどの問題が多発するようになっている。例えば、著作権の侵害では、各動画共有サービスに違法に著作物がアップロードされ、商用のデジタルコンテンツが無料で視聴できるようになり、そうしたコンテンツを視聴した場合には、著作権を侵害することとなる。個人情報においては、無許可で撮影した他者の写真をSNS上にアップロードし、その行為を問題視した一部ユーザによる報復として、アップロードした本人の個人情報が某掲示板サイトを中心にインターネット上にさらされる事案も生じている。さらに、スマートフォンで撮影した画像と位置情報から個人の自宅等が特定され、嫌がらせ行為に使用される事例もある。このようにインターネットサービスを活用することには、法に抵触することの危険性や、個人情報の流出、プライバシーが侵害される危険性を有している。

こうした危険性は、インターネットサービスを日常的に利用するようになった昨今では、日々意識する必要のある事柄である。慶應義塾では、インターネットサービスを利用する上でこうした危険を回避するためのリテラシーを、塾生一人一人が持ち合わせるよう啓蒙的な活動を行い、意識の向上に努めている。毎年年度初めには、商学部の新入生を対象に導入教育ガイダンスとして「情報リテラシー」の講義を実施し、日々の生活の中で利用するインターネットサービス関して、持ち合わせておくべきことに関して講演を行っている。その中で、著作権の侵害、個人情報漏えいの防止、プライバシーの侵害につながる行為を説明し、その対策方法、留意すべき点を伝えている。さらに、慶應義塾ITC(Information Technology Center)のホームページでは、インターネットサービスの中でも塾生にとって最も利用頻度の高いSNSに関して、利用上の注意点をまとめたガイドラインを公開し、利用上の注意すべき点を伝えている。インターネットサービスの利用に関する情報倫理教育を塾生に対して行う責任を慶應義塾は果たしている。

インターネットサービスは、日常的な活動を支援するものから、人と人との交流を促す利便性の高いものまであるが、その利用にはここで述べたように多様な危険性を有している。インターネットサービスの利活用による恩恵を受けるために、利用上の留意すべき点やその危険性を十分に理解することがユーザ一人一人に求められる。モバイル技術の発展と普及はSNSを発展させ、位置情報サービスに代表される個々に関する実時間の環境情報を活用したサービス(ビッグデータ)という新たな潮流を作り、個人情報の枠組みを拡張させている。安心、安全にインターネットサービスを利活用していくために、既存の著作権、個人情報、プライバシーといった点に留意しつつ、新たなサービスにより拡張した懸念事項への理解も進めていく必要性が高まっている。塾生に対する情報倫理教育の取り組みは、こうしたサービスの発展により拡張した懸念事項へ対応していくことが求められ、ITCの果たすべき責任は拡大していると言える。

最終更新日: 2015年9月17日

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