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特集

「塾生として求められる情報リテラシー」

ITC本部助教 寺岡 丈博


 近年の情報通信技術(ICT)の発達に伴い、我々を取り巻く社会的な環境は、著しい変化を遂げてきた。特に、テキストや音声、動画などのデジタル情報に関するインターネットを介したコミュニケーションの多様性は、我々の生活や仕事、社会における利便性を向上させたといえるであろう。従来から使用されてきたデスクトップPCやノートPCの高性能化だけでなく、スマートフォンやタブレット端末などスマートデバイスの台頭により、ICTが広く社会に浸透した現在、このような傾向が今後も進んでいくことが考えられる。しかし、ICTの普及により「可能になったこと」や「便利になったこと」が増えている一方で、情報の扱い方に関するトラブルが社会問題にまで発展するケースが生じており、このような問題を未然に防ぐことが現在の情報社会における課題の1つとして挙げられる。このような課題は、慶應義塾大学においても例外ではなく、湘南藤沢ITCや商学部が実際に取り組んでいる事例を以下に紹介したい。

 周知の通り、湘南藤沢キャンパス(SFC)は、教育・研究利用を目的とした最先端のIT環境を備えており、慶應義塾大学の中で最も先進的なデジタルキャンパスである。SFCに所属する塾生は在籍1年目より、キャンパスネットワークシステムであるSFC-CNSが提供するITインフラはもとより、各種多様なサービスを利用することができるため、湘南藤沢ITCでは新入生に対してSFC-CNSの紹介を兼ねて約70分間のSFC-CNSガイダンスを毎学期の始めに行っている。ここでは、新入生がSFCで塾生生活を始め易いよう、SFC-CNSの概要ならびに利用する上での注意事項を説明している。特に、「著作権の取り扱い」については具体的な事例に触れながら詳しく解説するなど、SFC-CNSの使い方のみならず一般的に身に付けておいてほしいマナーについても扱っている。このSFC-CNSガイダンスは、3学部2研究科(総合政策学部、環境情報学部、看護医療学部、政策・メディア研究科、健康マネジメント研究科)に入学した日本人の新入生のみならず、留学生やGIGAプログラムの新入生も対象にしており、英語で行う時間帯を別途用意している。このようにして、新入生全員が所属・言語を問わず、等しくSFC-CNSを利用できるように努めており、今後も湘南藤沢ITCとして取り組んでいく予定である。

 次に、商学部での取り組みについて紹介したい。2012年4月7日(土)に、商学部の新入生全員を対象とした「導入ガイダンス」において、ITC本部 鈴木茂哉 助教(当時)、ITC本部 手塚伸 助教(理工学ITC勤務)、そして私の3人が「情報リテラシー」の講師を担当した。この「情報リテラシー」は、大きく分けると「慶應義塾大学と情報サービス」と「情報倫理」の2つの内容から成っており、新入生がこのガイダンスを通じて塾生生活を始める上で最低限備えておくべき知識やルール、マナーを獲得する、或いは確認することを図ったものである。具体的には、前者の「慶應義塾大学と情報サービス」は、慶應義塾大学が提供している情報サービスとしてkeio.jpやITCシステム、学事Webシステムの概観に触れた後に、塾生生活を過ごす上で目的に応じて使い分ける必要がある各種アカウントについて説明した。また、後者の「情報倫理」では、「著作権の遵守」、「インターネット利用時の注意」、「セキュリティ対策」について説明し、ネット社会との正しく付き合うために必要なルールやマナーを確認した。これらの内容は商学部からの要望を受けて設定したが、新入生の中には真剣に耳を傾けてメモを取る者もおり、総じて反響が良かったと思われる。そのため、多少内容に変更が加えられる可能性もあるが、2013年度以降もこのようなガイダンスが実施されるであろう。

 昨今、慶應義塾大学の塾生の間でも「著作権の侵害」や「SNSにおける他人の誹謗中傷」などの問題が生じていることを鑑みると、塾生として養うべき「情報リテラシー」は、実社会に貢献し得る様々な情報を処理するための知識・技術だけではなく、情報の扱い方に関する高い倫理観も兼ね備えるべきである。そのための情報教育を、学部ごとに行うのか、キャンパスごとに行うのか、議論は色々あると思うが、ITC本部助教が担当することも1つの解であろう。上述したガイダンスという形は、塾生が塾生生活を始め易くする、且つ、知識やマナーを確認して問題を起こさないように気を付けることを目指した取り組みであり、情報教育として必須ではあるが、まだ始まりの段階に過ぎないと感じてしまう。陸の王者ならば、むしろ現在の情報社会を先導できるような「情報リテラシー」の獲得を義塾全体で目指すべきではないだろうか。

最終更新日: 2013年11月12日

内容はここまでです。