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特集

「VMworld2012参加報告」

ITC本部 金子 康樹


 新橋あたりを歩いていて、街頭インタビューにつかまり、「ここ数年、コンピュータ業界でもっとも影響力のあったと思うキーワードは?」という質問を受けた際に、「仮想化」と即答したら、おそらく多くの業界の仲間達は、「うん、うん」とうなずいてくれることだろう。

 そんな「仮想化」の最先端動向を知ることができる機会として、2012年8月26日から30日にかけて、米国で開催された、VMworld2012というイベントに参加させていただいた。

 VMworldは、仮想化技術の業界を先導する企業である、VMware社が毎年開催しているイベントであり、毎年、米国とヨーロッパにおいて開催されている。2012年で第9回目を迎え、参加者数も20,000人を超える大規模なイベントである。ITCでは、同社のサーバー仮想化製品を比較的早い時期から本格的に活用していることもあり、2012年2月以降、日本のVMwareユーザー会の幹事もさせていただいていることもあり、このたび、このイベントに参加させていただくこととなった。

 突然話が脱線してしまって心苦しいのだが、私は飛行機が苦手である。離陸と着陸は、悪夢の瞬間である。永遠に続くかと思われる気流の乱れによる激しい機体の揺れ。耐えられないからと言って、途中で「すみません。降ります」とは言えないあの恐怖。人に言わせると、「寝てしまえばいいのに」ということになるのだろうが、眠れるくらいなら、ここまで飛行機を嫌いにはならないだろう。

 そんな飛行機嫌いの私が、やむなく飛行機に乗って参加したこのVMWorldは、日本からの参加者も多く、200人以上のユーザー、パートナー企業関係者が、このイベントに参加しているらしい。そのため、JTBによって「VMworld参加ツアー」なるものまで企画されている。

 イベントには、全体セッション(General Session)、分科会(Breakout Session)、グループ討議(Group Discussion)、技術セミナー(Hands-on Lab)、企業展示(Solution Exchange)など、様々なプログラムが用意されている。

 開催期間の初日にあたる26日は、プレプログラム的なセッションは行われているが、実質的には期間2日目の27日の全体セッションから本格的なプログラムがスタートする。この最初の全体セッションでは、VMware社のCEOから、VMware社の最新の製品動向や、企業としての戦略、コンセプトなどが紹介される。2012年は、”Software Defined Data Center”という考え方と、Horizonというデスクトップ仮想化(エンドユーザーが使うPC環境を仮想的に提供する技術)が紹介された。

 “Software Defined Data Center”という考え方は、PC上で仮想的に別のOS製品を動かすというVMware workstationから始まり、ESXiという、サーバーの仮想化、ストレージの仮想化、という、これまでVMware社が積み上げてきた物理マシンの仮想化をさらに進めて、Data Center機能をすべて仮想化ソフトウェアで実現させてしまう、という構想を表している。つまり、コンピュータシステムを稼動させるために必要とされてきたサーバー、ネットワーク機器といった物理マシンを、すべて仮想環境で提供する、という構想である。この構想の実現の裏づけとして、VMworld2012の開催の1ヶ月ほど前に発表された、VMware社によるNicira社(オープンソースによるネットワーク仮想化を推進する企業)の買収が話題となっていた。

 一方、Horizonは、デスクトップ仮想化(Virtual Desktop Infrastructure/VDI)のためのソリューションである。これまでも、VMware Viewという製品をリリースしてはいたが、VDI分野においては、競合他社(Citrix社)に、やや水をあけられていた感があった。この状況を打破すべく、打ち出してきたのが、Horizonという製品名による統合的なVDI製品群の提供である。

 28日にも全体セッションが開催され、こちらは、統括技術責任者(CTO)から、初日に紹介があった最新製品の具体的な活用事例などが、デモを交えて紹介された。Horizon製品を使うことにより、PCだけではなく、タブレットや、携帯などからも、企業内システムがPCを使う感覚で利用できるため、来るべきBYOD(Bring Your Own Device・個人所有のデバイスから業務環境を利用するスタイル)時代にビジネススタイルがどのように変化するか実例が、寸劇風に紹介されていた。寸劇「風」ではなく、実際寸劇であり、企業の役員級の社員が実際にBYODを使用する、という筋立てでデモが進んで行くのだが、企業役員が、BYODをSYOMと称するシーンがあり、IT部門のスタッフが、「SYOMって何ですか?」と聞くと、「Spend Your Own Money(自腹で買って)デバイスのことだ」と答えたのには爆笑した。

 分科会は、テーマごと、ジャンルごとに数百のセミナーが用意されており、事前エントリーをして参加する仕組みになっているが、これは本当に綺羅星のごとくあるため、ちゃんと事前エントリーの際に、系統だてて参加計画を立てないと、あちこち散漫に話を聞いて、お腹いっぱいになったつもりで、消化不良を起こすことになってしまうから、十分注意が必要だ。これは私の経験そのものである。あちこちつまみ食いをしたものの、いろんなものを食べたせいで、本当においしかったのはどれなのかが良くわからなくなってしまった点は反省すべき点である。

 教育機関向けのグループディスカッション、というのがあったので、そこにもエントリーをしたが、これは、米国内のいくつかの大学で、実際にVMware社の製品(や、時には他社製品も含めて)の活用事例や、苦労話、それに対する、他大学での解決方法が紹介されるなど、非常にフレンドリーなセッションであった。

 前のほうでも触れたが、日本のVMwareユーザー会の幹事をさせてもらっているが、VMworld2012には、米国内の各地域や、世界各国のVMwareユーザー会(VMware User Group/VMUG)のメンバーが参加するほか、VMUG幹事(VMUG Leader)の集まるイベントもあわせて実施されて、ランチセッションや、レセプションパーティなどに参加して、他のVMUGがどのような活動をしているか、ということの一端をうかがいしることができた。

 29日の夜には、全体パーティが開催されたのだが、このパーティのメインは、ロックバンドのBon Joviのライブコンサートが行わるなど、勢いのある企業というのは恐ろしいものだ、とつくづく感心してしまった。

 4日間、文字通り朝から晩までいろいろなプログラムに参加して、体力的にはかなりきつかったが、得られた情報は貴重であり、大嫌いな飛行機に乗ってまでも参加した甲斐は大いにあったと思っている。毎年開催されているので、一日も早く、新幹線がサンフランシスコまで行ってほしいと願うばかりである。

Photo

VMworldの会場のひとつ、Moscone Center West。開催期間中はSanFranciscoのダウンタウン一帯が、VMworld一色に染まる。

Moscone Center Westの内部。こんな高い建物なのに3フロアしかないため、1フロアあがるためのエスカレータが驚異的に長く、高所恐怖症の人間には拷問である。

General Sessionの会場。写真では伝わりにくいが、20,000人近い参加者が入るので、とてつもなく広い。

分科会会場の様子。期間中は、数百というい分科会が開かれる。分科会以外にも、グループディスカッションや、ハンズオン・ラボなども開かれている。この写真が閑散としているのは、開始前だから。

すべての会場・通路には、無線LANのアンテナが設置され、快適にネットワークを利用できる。

VMUG Leadersのランチオンセッション。新旧CEOとCTOが一堂に介して、質問に答えるという貴重なセッション。

3日目に催されたパーティでは、BonJoviのライブが催された。前方のいい位置をキープした人の多くは、iPhoneやiPadの液晶越しにしかステージを見ていない。肖像権の関係で、顔は写っていない写真だが、間違いなくJon BonJoviの腕。

最終更新日: 2013年11月13日

内容はここまでです。