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提言

ITCと慶應義塾

ITC 副所長:高橋 大志


慶應義塾インフォメーションテクノロジーセンター(ITC)のメンバーとなり2年近くが過ぎようとしている。ITCに参加した当初は、1年も経過すれば、おのずと専門的な知識も増え、会議での議論の内容も深く理解できるようになるに違いないと、(今から思うと非常に楽観的に)考えていたのだが、1年を経過し2年に近づきつつある現時点においても、そのような状況からは程遠く、ITC業務の専門性の高さを改めて認識している。ただ、その一方で、以前よりもまして、インフォメーションテクノロジーセンターの行っている業務活動が、慶応義塾が行う研究・教育活動において、多大な貢献があるとの認識も強くしている。

近年、人工知能分野のアプローチが、強い関心を集めている。人工知能のアプローチは、これまで、いくどかのブームとその衰退を経ながら現在に至っており、近年、いまひとたびのブームを迎えている状況のようである。人工知能には、さまざまなアプローチが存在するが、とりわけ、ニューラルネットワークの一つである深層学習(Deep Learning)は、その有用性から強い関心を集めており、技術的な議論が行われる研究会などではもちろんのこと、日常生活において触れるテレビのニュース番組などにおいても、その技術動向についての話題が取りあげられることもしばしばである。このような深層学習に代表される技術のブレークスルーに伴い、画像の解析や、音声の認識、テキストデータの分析など、学術・産業分野において数多くの基礎的研究およびそれらの産業等への応用に関する取り組みが行われており、更に、そのような技術の進展が、社会にもたらす影響に関しても様々な議論が行われている。このような情報技術や計算機科学の飛躍的な発展を背景として、インフォメーションテクノロジーに対する関心も高まってきているとの印象をうける。

インフォメーションテクノロジーは、日々の活動において大きな役割を果たしている。例えば、メールやWEB会議システム、インターネットなどをはじめとしたインフォメーションテクノロジーを用いることで情報の交換、獲得を効率的に行うことができ、更に、社会におけるシステムの多くは、そのような機能が存在することを前提に構築されている。その意味で、インフォメーションテクノロジーが、社会の在り方に影響を与えているとも捉えられる。 インフォメーションテクノロジーにより、個人が取り扱うことのできる情報の量も、飛躍的に増加している。個人に集まる情報量が増加するのに伴い、個人の果たす役割も影響を受けているのかもしれない。例えば、企業における意思決定において中心的な役割を果たすと期待されるCEOは、従来と比較し数多くの情報を基に意思決定を行うことが可能である。そのような環境の変化にあわせて、組織のあり方なども変わってくるかもしれない。その意味で、インフォメーションテクノロジーは、日々の活動の効率化を促進する側面を有すると同時に、現実の組織、個人の役割などに影響を与える側面もあるのかもしれない。その意味で、その果たす役割は大きい。

大学の講義において、ファイナンスに関する授業を行っているが、ファイナンス分野もインフォメーションテクノロジーの影響を最も受けている分野のひとつかもしれない。新聞などのメディアをみると近年ではフィンテック(Fintech)などといった用語を数多く目にする機会も多い。数多くの金融資産の取引が行われる証券市場も一昔前は、人手で証券の発注などがおこなわれていたが、現在ではシステム化が進み、証券取引所から人の姿も少なくなっている。更に、近年では、高速に証券の売買を行う高頻度取引なども登場し、それら取引の是非に関する議論なども関心を集めている。ファイナンス分野は、情報が重要な役割を果たすことから、インフォメーションテクノロジーと密接な関連があるとの印象を受けている。

慶應義塾ITCのWEBページをみると、慶應義塾ITCの主な業務が4つ箇条書きにてかかれており、その中の一つに『義塾の情報化に関する中長期ビジョンの策定と実施』との項目もある。情報化は、いさかか抽象的な概念であるため、その効果を正確に認識しづらい面はあるかもしれないが、そのような情報化が慶應義塾の活動に与える影響は、今後ますます大きくなってゆくものと考えている。

http://www.itc.keio.ac.jp/ja/about_itc.html

最終更新日: 2017年9月16日

内容はここまでです。