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提言

「スマホ」と「攻殻機動隊」

理工学ITC 所長:松尾 亜紀子


先日、所有する携帯電話、いわゆるスマホ(スマートフォン:iPhone 6S)を自宅に忘れてきてしまった。久々のスマホ忘れで、落ち着かない。朝の通勤時間中には、スマホでメールやニュース等のインターネット情報にアクセスすることが日常となっていることから、電車に乗っていても落ち着かない。さすがに自分のオフィスに着いてからはスマホをいじることは無いが、日中の外出時には、メールチェックや秘書・学生への指示など、インターネットへ常にアクセスできる状態であることから、できないことが落ち着かない。実際、疲れてぼんやりと電車に乗っていることも多いが、ちらりとスマホはチェックしているのだろう。

さて、「攻殻機動隊」というものをご存じだろうか。1995年に劇場用アニメ映画として公開されたもので、今となっては古いアニメであるはずだが、その内容はいまだ新しさに満ちている。ハリウッド映画「マトリックス」は「攻殻機動隊」にインスパイアwされたことが知られているが、もしも、「マトリックス」をお好きな方が「攻殻機動隊」をご存じないのであれば、是非、ご覧になるべきだろう。だが、私が言いたいことは映画のことでは無い。「攻殻機動隊」の劇中での設定である。そこでは人間は電脳化が進み、身体自体がネットワークに接続されているのである。つまり、直に襟足辺りにプラグインすることもあれば、飛び交うワイヤレスのネットワークに頭脳そのものがアクセスすることもあるのである。この発想が20年以上前に作られたことを思うと、作者の先進的な考えに驚くばかりでなく、更に先を見ているのではないかと思われる。そこでは人間は電脳化、つまりサイボーグ化されており身体の一部あるいは脳を除く全てが機械(義体)なのである。このことは驚きであるが、確かに想定できる超未来の話と言える。

「攻殻機動隊」では人は電脳化されているが、現在の私たちはどうであろう。
私たちの身体の殆どオリジナルであるが、スマホや電子機器のインターネット接続を介して、完全に電脳化社会(インターネット)に接続されているといっていいだろう。電車に乗っている際に目にする日常の風景を思い出してもらいたい。今どき新聞や本を広げて読んでいる人は殆どいない。たいていはスマホをいじったり、のぞき込んでいる。やっていることは人によって異なるであろうが、少なくとも電脳化社会にほぼ接続しているかと思われる。現在、スマホの通信速度はそれほど高速ではないが、10年以内には現状の有線接続並みあるいはそれ以上の速さになると思われる。つまり、いつでもどこでも簡単に電脳化社会と一体化できることになるのである。情報は全てデジタル化され、必要なときに必要なものが手に入る。と言うことは、各自が契約する携帯電話のネットワークで全てが片づくことになる。ただし、その頃には携帯電話会社の回線そのものが形態を変えているかもしれない。また、私たちの身体の一部もサイボーグ化されていて超人間になっているかもしれない。であれば、その時にITCはどうなっているのか?どのようなサービスを続けているのだろうか?興味深いところである。

インターネットは今日の世界を変えてしまったが、「攻殻機動隊」の世界に追いついただけだと思うと、それも感慨深い。

最終更新日: 2016年9月9日

内容はここまでです。