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提言

入試願書受付オンライン化の実現に向けて

ITC副所長 萩野 達也


大学の入学試験の申し込みをWeb上から行なうことができる大学が増えつつあるが、残念ながら義塾ではWebで申し込みはまだできない。一部の推薦入試や大学院の入試でWeb上で基本情報を書き込んだり、受験番号の取得などができるようになっているが、学部の一般入試では、郵送による申し込みが必要である。受験生が願書を入学センターに郵送し、入学センターは願書の情報をコンピュータに入力し、受験票を印刷して受験生に送り返す。受験生は顔写真張った受験票を入試当日に持参し、大学側はこれを回収し、別の受験票を受験生に持ち帰らせる。受験生と入学センターの間で郵便が往復するために、時間がかかるだけではなく、受験生が願書に手書きで書いた情報を義塾側で入力するために手間がかかったり間違いも発生しうる。受験生自身がWeb上で入力を行なえば、このような手間や時間はかからない。では、なぜ郵送しているのだろうか。

まず考えられる理由としては、偽の受験票を防ぐ目的なのかもしれない。Webで申し込んで、自分のプリンタで受験票が印刷できるようになると、偽の受験票なども簡単にできてしまうかもしれない。しかし、受験番号が重なったり、存在しないものであった場合には、受験会場でバレてしまうので、偽の受験票を作成するのは難しいはずである。

次に考えられるのは、願書とともに送らなくてはならない必要書類があることである。義塾が現在必要としているのは、高校の調査書とコンビニを使った受験料振り込みの証明書である。受験料の振り込みに関してはクレジットカードにしてしまえば問題ないのではないかと思う。受験生が持っていなくとも両親がクレジットカードを持っているだろう。クレジットカード社会のアメリカ人の両親からは、入学金や授業料がどうしてクレジットカードで払うことができないのか文句を言われたことすらある。もう一つの調査書であるが、これは高校の成績などが書かれたものである。高校の担任の先生などに書いてもらい、厳封されたものを願書とともに送る。改竄などを防ぐために、コピーや厳封されていないものは認められない。これは郵送してもらうしかないように思えるが、そんなことはない。

調査書を提出してもらう一つの理由は本当に高校に行っていることを証明することと、もう一つは高校での成績を入試の合否に用いるためである。もし、入試が入試の科目だけで決まるのあれば、調査書の意味は半減するだけでなく、受験の時に必ずしも必要なくなる。必要なのは本当に大学に入学する時であり、その場合には合格者だけの調査書があれば良い。入試は高校卒業前に行なわれるため、高校の卒業証明書の提出は合格後であり、その時に一緒に調査書を出しても良いかも知れない。

そもそも、調査書や卒業証明書はどうして紙の形で提出しなくてはならないのだろうか。他のほとんどの紙の証明書もそうであるが、お金を払い、手間をかけて証明書をもらうのであるが、受けとった側はちょっと確認してファイリングするだけで、証明書の役割はアッと言う間に終ってしまう。紙と時間の無駄使いにも思える。証明書を発行する方もコンピュータで管理されている情報から印刷しているだけなので、印刷せずに直接オンラインで受渡しすれば、紙と時間を節約することができる。

AO入試が主な入試手段であるアメリカでは、調査書の入力は大学から指定されたところに高校側がオンラインで入力し、受験生が仲介する必要はないと聞いている。それぞれの大学毎に利用するシステムが異なると高校側が大変なので、大学連合で共通のシステムを利用したりして、大学および高校の両方にメリットがあるようにしている。

推薦状などは高校の先生などの推薦者が直接書かないといけないが、成績や卒業したことの証明書などは、権限がある人ならだれが出しても構わない。そもそもどうして成績や卒業をそれぞれの高校が管理しているのだろうか。5年を越えたものは破棄しても良いことになっているが、卒業生に取っては困ったものである。それぞれの高校が管理せずに県などの高校と統括するところが管理すれば良いのではないだろうか。少子化にともない廃校になる高校も出てきているので、高校にまかせるのではなく、教育と統括するところが責任を持つべきではないだろうか。

韓国では空港で大学の成績証明書や卒業証明書を印刷できると聞いたことがある。日本でも大学の成績などは文部科学省が統括して管理してはどうだろうか。学歴詐称も起こりにくくなるのではないか。個人情報的なものなので、本人あるいは本人から委任されたものが確認できるようにしておけば良いのではないか。マイナンバーも始まろうとしているのだから、もう少し情報を統合して手間のかからない仕組みにしても良いのではないだろうか。

受験の願書のオンライン化だけでなく、入学試験そのものもオンラインで行なうことができると、受験会場に行かなくても良くなり、地方からの受験も容易になる。もちろん、本人認証や問題漏洩が問題になるが、問題については多数用意されて受験生毎に異なったものになるようにしておくと良いかも知れない。受験日も受験生に合わせて選ぶことができると便利である。しかし、本人認証はやはり大きな問題で、カメラによる自動監視や誓約書を書かせるくらいでは解決しないかも知れない。一発勝負の入学試験でなくなれば、何か解決方法ありそうな気もする。

オンラインによる入学願書の受けとりのシステムやAO入試の調査書の入力システムなどは、個々の大学が独自に開発する必要はないと思う、大学ICT推進協議会などで共同で開発するのが良いのではないだろうか。入試自身は大学間で受験生の取り合いの競争であるが、受け付けのシステムでは協調してもよいのはないかと思う。

最終更新日: 2014年10月21日

内容はここまでです。