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特集

大学ICT推進協議会について

ITC本部:金子 康樹


大学ICT推進協議会とは

大学ICT推進協議会(AXIES:Academic eXchange for Information Environment and Strategy ∗1)は、わが国における高等教育機関および学術研究機関による相互連携協力を通じて、情報通信技術を活用した教育・研究・経営等の活動の高度化を図ることを目的として、2011年2月に設立された。
(∗1 以下AXIESと表す)

慶應義塾は、協議会設立時の発起人として、設立当初から加盟しているほか、現在に至るまで、ITC所長が理事として参画しており、協議会の運営・発展の一助を担っている。

加盟機関は、国・公・私立大学、短期大学や国立高専、大学共同研究機構研究機関などの正会員が108機関、ICT関連企業などの賛助会員が61社となっている。
他の様々な類似団体において、賛助会員が正会員と直接協議する機会が与えられていないケースが散見されるが、このAXIESでは、役員への就任資格こそないものの、部会などへの参加は認められており、大学・研究機関のスタッフと平等な立場で、わが国の教育・研究・経営活動の高度化に向けたICT活用に関する意見交換を行っている。

大学ICT推進協議会は、「国立大学情報教育センター協議会」と「全国共同利用情報基盤センター長会議」の2つの会議体での重複した議論が行われていることを解消すること、また、国立の機関だけでなく、オールジャパンでの連携の必要性の認識が高まったことから、公立、私立の高等教育機関を加えた組織として発足するに至っている。

大学ICT推進協議会や、米国の非営利団体であるEDUCAUSEをモデルとしており、別称として「日本版EDUCAUSE」と称することもある。EDUCAUSEは、1960年代に発足した高等教育機関におけるデジタル・コンピュータの共同利用と活用を促進する2つの団体、Educom(Duke大学、Harvard大学ほか、米国内主要8大学の医学部長・副学長の集まる会議による提言により発足)と、CAUSE(IBM 1401コンピュータのユーザーグループであるCUMREC(College and University Machine Record Conference)が拡大して発足)が、1998年に統合されて発足した。現在では、2、000を超える機関が加盟しており、米国だけではなく、世界中の機関が参加する巨大な組織となっている。

大学ICT推進協議会は、このEDUCAUSEをはじめ、カナダのCUCCIOや英国のJISCなど、国際的なコミュニティへも積極的にコミットしており、海外動向の把握やICT利活用に関するわが国の強みを世界へ発信する役割も果たしている。

AXIESの主な活動
総会・理事会

AXIESの役員は、理事15名、監事2名によって構成されている。年に6回程度の頻度で理事会が開催されており、会の運営などの関する事項が審議される。
毎年5月に通常総会が開催され、事業や予算など、会の重要事項についての決議、承認が行われている。

部会(Special Interest Group)

AXIESの中心的な活動として、各種部会の活動があげられる。2017年度までに12の部会が置かれ、下記に記すとおり、部会ごとに参加メンバーが様々な調査や検討を行っている。

・CIO部会

会員校のCIOの相互交流・相互研修を中心に各大学の抱える共通課題やベストプラクティスを学びCIOのリーダーシップ養成を行う。

・ITベンチマーキング部会

EDUCAUSEのコアデータサービスと同様の調査を日本国内で行い、国内の大学間でICT関連予算やICT推進度を比較する尺度を提供する。

・情報教育部会

情報教育等について、国内の状況を調査・集約するとともに、ネットワークセキュリティ確保のための適切な情報倫理教育のコンテンツの調査、研究、整備を行う。

・オープンソース技術部会

会員各組織内でオープンソースソフトウェア(OSS)を活用するために、OSSの利用実態調査を行い、OSS活用に必要な技術を修得すべく合同研修、共同開発、標準化を行う。

・学術・教育コンテンツ共有流通部会

大学等において開発蓄積された、学術・教育コンテンツの共有・流通・再利用・標準化を促進し、日本の大学の学術と教育の振興を図る。

・ソフトウェアライセンス部会

各大学におけるソフトウェアライセンスの締結・管理・利用・課題について調査・把握し、会員間で情報を共有するとともに、ソフトウェアベンダとの交渉やソフトウェアライセンス管理システムの共同開発を行う。

・認証連携部会

NIIが進めている学術認証フェデレーション「学認」へ参加するとともに、学内認証環境の利便性を飛躍的に向上させるための活動を行う。

・クラウド部会

大学が保有するプライベートクラウドシステムやクラウドサービス事業者が提供するパブリッククラウドシステムの利用に関するベストプラクティスの共有や、新しいクラウド型サービスの共同開発・共同運用に関する議論と実装を行う。

・ICT利活用調査部会

過去の類似の調査(「ICT活用教育の推進に関する調査研究」等)における調査結果を踏まえ、国内外におけるICT利活用の実態や課題を明らかにする調査を実施し、我が国の高等教育におけるICT利活用のあり方を提案する。

・教育技術開発部会

新しいテクノロジーおよび標準規格を教育の場で利用するために、企業と大学が一丸となってそれらを用いた教育手法・技術を共同で開発し、大学におけるそれらの実 践的な利活用のあり方を提案する。
部会Webサイト

・高品質・セキュリティICT部会

新しいテクノロジーおよび標準を、教育の場で活用するために、大学の研究成果と企業の実装・開発技術をすりあわせ、現実的なソリューションを作り上げる土台の議論を行うことを目的とする。研究に関しては、合宿形式を用いて深く自由な議論を行い、企業の技術とのすりあわせには、個別の討議あるいは発表会を用いての個別協議を行い、特に企業の知的財産権を考慮した活動を行う。

・研究データマネジメント部会

大学・研究機関での研究の管理と利活用に関する諸問題を取り扱う。大学の研究者、情報基盤設計者、大学執行部、資金配分機関、オープンサイエンスを推進する研究コミュニティ等、多様なステークホルダからの情報収集、議論の場を設けることで、研究活動のライフサイクルに沿った、データの収集、生成、活用、保管と公開のためのICT基盤の在り方を提言する。

年次大会

もうひとつの大きな活動として、毎年11月~12月頃に開催される年次大会がある。
2017年度の年次大会は、広島で開催され、1,000名を超える参加者があった。
年次大会では、個人またはグループによる研究成果の発表会が開かれ、テーマごとに研究成果を口頭発表する場としての「一般セッション」、ポスターによる研究成果の発表の場として「ポスターセッション」が設けられる。優秀な発表は表彰対象となり、翌年の年次大会の全体会で表彰される。
また、各部会による「企画セッション」も多数開かれ、部会の活動報告や、事例紹介など、有益な情報を得ることができる。
賛助会員を中心とした展示会も併設され、最新のICTソリューションに関する情報が得られるほか、「出展セミナー」もいくつか開かれるため、製品の実活用事例などを知ることができる場となっている。
年次大会は3日間開催され、日中のセッションだけでなく、夕方からは懇親会も催され、大学や企業の壁を超えて、多くの方々と情報交換をしたり交流を深めたりする場として有効に機能している。

おわりに

ICT関連分野の技術進歩は著しく、また、それを取り巻く課題も多種多様であり、単一の大学が独力ですべてを把握し、解決策を導き出すことは不可能である。
こうした、最新の技術動向や業界のトレンドを把握し、学内での効果的なサービス提供に寄与させるため、国内の主要な高等教育・研究機関のICT関連部門の教職員や、主要ICTベンダーとの情報共有の場として、今後も積極的に活動に参加・協力していきたい。

最終更新日: 2018年9月25日

内容はここまでです。